らいの隠しごとはどこのウチの女中でも必ず嗅ぎつけているものなのさ」
「それに甚吉の行方不明が今度判った重大な二ツではありますが、もっと重大な事があるのです。泉山さんはお忘れですか。未亡人とキク子さんは、あの事件が起るまでは万引したことがなかったのですよ」
と新十郎は面白そうにクスクス笑った。そして、つけ加えた。
「さて、明日は皆さんと浅虫家へ参ることに致しましょう。明日が、この事件の最後の日となることでしょうよ」
まだ道遠しと思っているのに、だしぬけの言葉。虎之介と花廼屋は、しばし、茫然。しかし、虎之介はやがて打ちうなずいて、
「なんのことだい。今度の二人殺しの犯人なら始めから分ってらアな。それは浅虫家の全員さ。それだけじゃア、昔のナゾがとけていないよ。なア、新十郎どん」
「いいえ、たぶん、全てのナゾの最後の日です。そして、恐らく、大そう陰鬱な日となるでしょうよ。では、さよなら」
★
虎之介の話をきき終った海舟、悪血をとりつつ黙々たること半時間あまり。朝食がすんで間もないらしく、虎之介の前には持参の竹の包がちらかっている。
「その未亡人は、智力胆力兼備の女
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