れから殺すばかりの時に際しての予言であり、世良田の言葉に実感がこもっていたのは自然だろうと思います。少くとも、こう見ることによって、全てがあまりに事実と一致しているのです。快天王はまち子に赤頭巾をかぶせると云われましたが、これはフランスに有名なシャルル・ペロオの童話、フランス人なら日本人のカチカチ山と同じように知らない人のない童話です。赤頭巾は森のお婆さんの病気見舞に行って狼に食い殺されてしまうのですが、あの殺人の現場、あの深山の密林のような静かさと藁屋根のアズマヤこそは、赤頭巾の殺された森の中の小屋をいかにも暗示している如くではありませんか。私はこの予言によって第三の殺人も世良田こそ唯一の下手人と断定しました。尚蛇足ながら、快天王の声は世良田の発しているもので、西洋で腹話術というごく有りふれた芸なのです」

          ★

 虎之介から真犯人の報告をきいて、海舟は苦笑して言った。
「そうかい。なんのことだい。第一第二の殺人に被害者が抵抗なく殺されているのはメスメリズムのせいだというのは、オレがちゃんと見ていたことだが、第三の場合に限ってそれを忘れたとは、バカなことがあるもの
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