ます。オカミサンと芳男さんの仲がどうこうということを、疑っておいででした。そして私に包まず教えろとのことで、大そう困却いたしました。なんとか云い逃れましたが、私まで大そうお叱りを蒙った次第でございます」
「オカミサンと芳男の仲は、どんな風だえ」
「手前どもには分りかねます。どうぞ、当人にきいて下さいまし」
「昨夜二時に戻ったとき、芳男の姿はもう見えなかったかネ」
「私は小僧どもに近い方、芳男さんは離れに近い方で、ちょッと離れていますから、なんの物音もききませんでした」
 三行り半がでてきたところをみると、お槙と芳男の関係は実際あることのようである。人の情事の取調べにかけては、さすがに田舎通人、ぬけ目がない。おしの、おたみの女連、彦太郎、千吉、文三という小ッちゃい子供連、これをよびあつめて搦手《からめて》から話をたぐりよせる。女はお喋りであるし、小さい子供は情事について批判力がまだ少ないから、噂のある通りを軽く喋る。綜合すると、お槙と芳男の仲は、すでに町内で噂になっているほどであった。
 花廼屋は女子供から調べあげてきて、ニヤリ/\と鼻ヒゲの先をつまんでひねりながら、
「おさかんなものだ
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