ゝでしょう、堂々と郵便箱のぞきなさいな、などゝ冷笑する。
トン子さんが郵便屋の影を認めると、スイとでて行って郵便箱からとってきて、妹に渡す。
妹がタシナミのない嬌声をあげて、
「来ましたよ、来ましたよ、お待ちかねの物」
けれども、時には、私が便所へ降りる途中に運よく郵便屋の通りすぎる影を認める時がある。私が玄関からでようとすると、出会い頭に、トン子がとびだして、スイと私をすりぬけてでる。
「いゝよ。僕がとってくるから」
トン子さんは下駄を突ッかけかけて、敵意の目でジッと私の顔色をうかゞう。穏やかならぬ目つきである。
私は立腹して、
「いゝったら。僕がとってくる」
トン子さんは、とっさに蒼ざめ、キリキリ口をむすんで、顔をそむける。
「なんだって仏頂ヅラをするんだい。僕がとりに行くからいゝよ、と云われたら、ハイと答えて、すむことじゃないか」
顔をそむけたまゝ、これをきいていて、肩に怒りをあらわしてプイと振りきるように郵便箱へ駈けだして行くのである。なんとも、興ざめ、相手にするのがアサマシイ思いであった。なんという強情、ヒネクレモノ、可愛げのない奴だろう、ブンナグッてやりたいよ
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