をしめた。それからともども探したが見当らない。また登志の首をしめた。しかし、思いついて外へとびだすと、部落の半鐘を盲メッポウ打ちならしたのである。否応なく部落の全員を集めたあげく、登志と七ツの子供を前へ呼びだして、
「犯人は誰だ。名を云え。誰が盗んだ。白状しろ」
 連呼しながら二人の首をしめあげたのである。二人は半死半生になったが犯人の名を云わなかった。心当りがなかったのだから言わなかったのは無理がない。

          ★

 以上はこの物語の発端であるが、探偵小説的な興味と結末を期待されるとこまるのである。その方面のことはアイマイモコとして神秘のベールにとざされている。盗まれた現金が九十一万いくらであるから警察もかなり念入りに調べたけれども全然雲をつかんだにすぎない。
 神棚の下に張り番していた登志が第一に疑られたのは当然だが、彼女はその時間にアイビキしていた。アイビキの相手は保久呂湯の三吉であった。三吉はアイビキの後登志に送られてまッすぐ帰宅したから、犯人はアイビキ中に忍びこんだことが分っただけで、中平の入浴はその「鉢の木」のおかげで部落の誰にも分っていたのだから、留守番の
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