表して
「ヤ、これで騒ぎもすんで、めでたい。それでは中平と久作の御両氏にまかせるから、せっかくだが山をくずして金をだしてもらいたい。みんな手伝いにでたいとは思うが御承知のように今は畑のいそがしい時だから」
 という結論に終ったのである。
 久作は叫びたいのをジッとこらえていた。一言も発せず、身動きもしなかった。結論がでて、みんなが散会しはじめると、彼もだまって歩きだした。石室の中へもぐりこんで、ゴロッと横になったのである。そのあとをつけてきた中平は、穴の入口に腰を下し二連発銃を下において腰にぶらさげたムスビをとりだして食べはじめたのである。

          ★

 そのまま久作はでてこなかった。話しかけても返事をしなかった。中平は穴の中に入りこんで彼の肩をゆりうごかしたが、ねたふりをして目もあけなかった。夜になったので中平は家へ戻った。翌日行ってみると、久作はまだ穴の中にいた。その翌日になっても久作は穴をでなかった。久作は断食して死ぬつもりだという評判がたち、中平以外は益々誰も穴に近よらなくなった。
 しかし久作は断食していたわけではない。日中だけ穴にもぐっているだけだ。そして考
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