便乗型の暴力
――競輪その他――
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)騒擾《そうじょう》
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 競輪というと八百長騒ぎが景物のようだが、終戦後急速に流行して、組織が完備していないからいろいろのトラブルが起るのは仕方のないことで現にそうだからといって、競輪の性格がそういうものだときまってるワケでもなかろう。組織が完備すれば、八百長も減少して、競馬なみにはなるだろう。
 トバクに八百長のつきまとうのは、泥棒や浜のマサゴと同じものかも知れないが、観衆がこれを看破して抗議するのは当然のこと、イカサマが明瞭と知れても素人衆は泣寝入りときまった昔の賭場にくらべれば、民主国のホマレここにありと言うべきかも知れん。
 しかし、競輪には八百長が多いというところに便乗して、八百長くさいと独断するや、モッブ化して騒擾《そうじょう》を起し、売上金を強奪するに至っては、これは逆に素人衆の賭場荒しである。競輪騒動が常に賭場荒しとは限らないが、常にイカサマを看破しているとも限らない。見込みの外れた口惜しさもあり、長々の損失の腹イセもあって、公平な判断はゆがめられているからで
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