文章その他
坂口安吾

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)順《したが》つて

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)毎日|消息《たより》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#濁点付き片仮名ワ、1−7−82]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)たま/\
−−

 私は元来、浅学と同時に物臭の性で、骨を折つてまで物事を理解しようなぞといふ男らしい精神は余り恵まれてゐない。そのせいで、観賞に時代の割引を余儀なくされ、その理解に一々なにがしの造詣を必要とする古典芸術なるものは、見ない先から逃げたがる風であつた(ある)。順《したが》つて、その方面の知識はない。
 たま/\退屈の然らしめた悪戯で、文楽の人形芝居を見た。「合邦」の「合邦内の段」といふものであつたらしい。いつたい、合邦といふ物語は面白いものではない。玉手御前(といふ名前であつたかしらん――)が義理の息子と不義をして館を出奔する、或夜悄然と父合邦の侘
次へ
全12ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング