文学のふるさと
坂口安吾
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)「赤頭巾《あかずきん》」
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)寺|詣《もう》でを致します
−−
シャルル・ペロオの童話に「赤頭巾《あかずきん》」という名高い話があります。既に御存じとは思いますが、荒筋を申上げますと、赤い頭巾をかぶっているので赤頭巾と呼ばれていた可愛《かわい》い少女が、いつものように森のお婆《ばあ》さんを訪ねて行くと、狼《おおかみ》がお婆さんに化けていて、赤頭巾をムシャムシャ食べてしまった、という話であります。まったく、ただ、それだけの話であります。
童話というものには大概教訓、モラル、というものが有るものですが、この童話には、それが全く欠けております。それで、その意味から、アモラルであるということで、仏蘭西《フランス》では甚だ有名な童話であり、そういう引例の場合に、屡々《しばしば》引合いに出されるので知られております。
童話のみではありません。小説全体として見ても、いったい、モラルのない小説というのがあるでしょうか。小説家の立場としても、なにか、モラル、そ
次へ
全12ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング