。もともと石なんですよ。素人ノド自慢と、三ツの歌でしょう」
「呆れた。おうかがいしますが、文化とは何ぞや? 農村といえどもですね。かりにも青年団が牛耳る文化祭でしょう。鎮守さまのお祭の余興とはちがうはずでしょう」
「どうも恐れ入りましたね。まさか本職の芸人がこの村へ来てくれるわけもありませんのでね」
「お金次第ですよ。お金をだして芸人をよんで、お金をとって見せる。そして、もうけなさい。文化祭はもうかるものですよ」
「興行は不況だそうじゃありませんか。本職がもうからないのに、素人がもうかるはずはないでしょう」
「素人だから、もうかります。文化祭ですからね。本職は文化祭がやれないので、気の毒なものですよ」
「では、失礼ですが、アナタに文化祭の幹事をやっていただけませんか」
「ええ、やってあげましょう。文化祭らしく、ワッとみなさんに景気をつけてあげましょう。たのしいものですよ。青春ですね」
 意外また意外。いともアッサリとひきうけた。
 当日から信二の家が文化祭企画本部になって、青年団の幹事連中が集合する。外れても自分の損にはならないようだから、ノータリンの坊っちゃんが何をやらかすかと面白ず
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