入らせてくれる女の方が趣味にかなつてゐる。先生はそつちの方を思ひだして行かなければならなくなつた。
マリマリ嬢は人差指でコメカミのあたりをクリクリ突きまはしながら片目をつぶつてニヤニヤした。
「さすがに大先生は気前がいゝのね。困つちやつたな。私、先生にエロサービスしようかなア」
「エロサービスは大先生の趣味ではない」
先生はそこで始めて大いに威厳のあるところを見せた。
「エロサービスはもつぱら愛情によつてなすべきものだ。これを金額に応じてなすべきものではない。これはすでに亡びたる昔日の道徳にすぎない。もとよりマノン・レスコオが恋人であるタイタイ大先生の見解によれば、エロサービスは金額に応じてなさるべきものである。しかしかゝるエロサービスは当人が天来の技術者であり芸術家であるときに成りたつのであつて、文学に於けるが如く、エロサービスに於ても、天分なきもの、又、天分の開花なきものが、この道にたづさわつてはいけないものだ」
「私、先生のガマ口の中味を横目でにらんぢやつたのよ。さすがにお金持なのね。をいしいもの、御馳走してちやうだいよ」
「よろしい。支度をして出てきなさい」
「アラ、うれし
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