と思う。ヒダ嫡流の皇子サマか天皇サマは殺されて白い鳥になってどこかへ飛び去ったという。ヒダの王様は神の意か、天皇の意か、コウとよんでいたようで、ヒダの古い京にコウノ岡、コウの森などの名が残っていますが、今も諸国にコウの鳥の伝説をもっているのはこの落ち武者の部落のあったところでしょう。白山神社、スワ神社などもここの神様でしょうが、八幡様もそうらしい。ほかにもいろいろこの一族の神様がありますが、以上の三ツなどがヒダ族の主要なウブスナのようです。ヒダ自身の第一の神社は水無《みなし》神社ですが、これはどうやら白鳥になって飛び去ってこの世から身体を失った人、実際はヒダへ追いつめられて負けて死んでその首をミヤコへ持ち去られてしまった人、そのヒダ王朝の嫡流の最後の人を祀ったものらしく、水無《みなし》神社は身無《みなし》神社の意であろうと私は解しております。
ヒダ王朝の嫡流を亡して庶流がとって変る時代の国史は、その偽装が幾重にも幾重にもと張りめぐらされておって、恐らく嫡流そのものの本体をいくつにも解体して、その一ツに自分のやった悪役を押しつけたりしているように思われるのですが、たとえば悪役の蘇我氏、
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