いかも知れませんな」
花井「それ、ごらんなさい。あなたもそう思うでしょう。サヨは必ず殺されますよ。近いうちに、殺されます」
人見「必ず、というのは、どうですか。ともかく、何かあってもフシギはありませんな」
花井「必ず、ですとも。必ず殺されなければならない法則があるものですよ。サヨの場合がそうです」
人見「その法則とは?」
花井「いずれ事実が証明しますよ」
そのとき同席していた平戸先生が「お先きに」と立ったので、人見も「では私も」と立って花井に別れをつげ平戸先生と肩を並べて校門をでた。
平戸先生は独身の若くて美しい婦人であった。この日は平戸先生が日直、花井訓導が宿直の当番で、ちょうど交替の夕刻であった。花井は平戸先生に求婚して拒絶されたという風説があった。
人見が「やっぱり」と思ったのは、この記憶のせいであったが、むしろ犯人に花井をふと聯想して怯えたり慌てたりしたのかも知れなかった。
★
村の駐在所に捜査本部ができて、連日人々が出入した。二週間すぎたが、容疑者はあがらなかった。サヨと交渉のあった男たちはそれぞれアリバイが成立して容疑の余地がなくな
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