眠るためには酒を飲む必要があり、ヒロポンの効果を消して眠るまでには多量の酒が必要で、ウイスキーを一本半か二本飲む必要がある。原稿料がウイスキーで消えてなくなり足がでるから、バカげた話で、私は要するに、全然お金をもうけていないのである。

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 織田のヒロポンは毎日だから、ひどかった。毎日ヒロポン、仕事、遊び、ヒロポン、仕事という順序で、くぎりがないから不健康だ。織田のヒロポンは注射だが、私は注射は好まない。第一回目だけ、よく利く。打ったとたんに頭が澄んでくるから、バカにきくように思えるけれども、一時間もすると、ぼやけてくる。二本目を打つ。もう、さほど利かない。
 飲む方はすぐは利かぬが、効果が持続的だから、私のように、仕事は仕事だけまとめてやるというやり方には、この方にかぎる。どうしても飲みすぎて、顔色はそう白となり、汗はでる、動きはうつ、どうもいやだ、もう飲みたくないと思うけれども、仕事の無理をきかせるためには飲まざるを得なくなってしまう。

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 新潮と改造の新年号の小説の時はひどかった。どっちも、まる四日間、一睡もしていない。そうかとい
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