の秘密をつきとめる以外には手がないと思いますよ。もっともその秘密が軽々しく判明するぐらいならゆすりも成立しないわけですね。特に母の口からはきくことができますまい」
辻はそのとき本邸の応接間にいくつかの能面が飾られていたのを見たことを思いだした。その中には鬼女の面もあったように思った。鬼女の面とはどういう形のものか実は彼はよく知らないのである。
「お宅には鬼女の能面がいくつもあるのですか」
「そうですね。能面はたくさんありますよ。ウチでは父も母も仕舞い狂ですから能面は実用品です。日本で最優秀というべき面もいくつかあるはずです。鬼女の面も三ツや四ツはあるでしょうね」
「焼死体のあった部屋にも鬼女の面があったそうですね」
「あの別館には高価なものはおかないはずですが、何かそのような物があったかも知れません」
そこへ来客があったので辻は辞去したが、反対側の長屋に住んでいる爺やのところへ立ちよってアリバイをただしてみると、
「私は九時から十二時まで八百屋で将棋をさしていましたよ。ゆうべのことだから八百常にきいてごらんなさい」
八百常にただしてみるとこのアリバイはハッキリしている。八百常の家
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