」
「ウム、お互いに、まア、達者でしあわせというものだ。ところで、つかぬことを訊くようだが、お前さんはこの一月ほど、牛がでて、そのなんだな、蹴とばされるような夢をみなかったかな」
「なんの話だね。藪から棒に。和尚さんは人をからかっているよ」
「いや、なに、ただ、牛の夢にうなされたことがないかというのだよ」
「そんなおかしい夢を見る者があるものかね。ほんとに意地の悪いいたずら者だよ、和尚さんは」
女は馬鹿みたいにアハハアハハと笑った。和尚はてれて、ひきさがってきた。
[#地から1字上げ](初出誌不詳)
底本:「桜の森の満開の下」講談社文芸文庫、講談社
1989(平成1)年4月10日発行
2004(平成16)年12月3日第34刷
底本の親本:「坂口安吾選集第六巻」講談社
1982(昭和57)年5月発行
入力:田中敬三
校正:noriko saito
2006年7月4日作成
青空文庫作成ファイル:
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