天保年間のことだ。ちようど百年の昔である。
山へ遊行するにも此《かく》の如き有様であるから、登山になれた我々の感情によつて、祖先達の山の感情を忖度することはできない。
今日山の「感傷」は西洋の文化と感情が移入されるまで、祖先達になかつた。信州の高原地帯には昔から鈴蘭があつたのだが、こんな雑草が東京へ送ると金になるのだからと云つて、山里の人々は驚いてゐるのであつた。
底本:「坂口安吾全集 03」筑摩書房
1999(平成11)年3月20日初版第1刷発行
底本の親本:「信濃毎日新聞 二〇五七五〜二〇五七八号」
1939(昭和14)年8月16〜19日
初出:「信濃毎日新聞 二〇五七五〜二〇五七八号」
1939(昭和14)年8月16〜19日
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
※新仮名によると思われるルビの拗音、促音は、小書きしました。
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2008年10月15日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://ww
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