ぞれ違うんですけれどもね。これは男のお客様の好みもあるでしょうが、キミちゃんが殿方の人柄に応じて選んだり、キミちゃん自身の好みというものもあるのかも知れません」
 ここまで話してきて、主婦はちょッとガッカリした顔付をして、言葉をきった。
「でも、キミちゃんが、女の子をお客様に紹介する話というのが、いつも、おんなじなんですよ。今も仰有る通りの、モモのイレズミをえぐりとった、というんですがねえ。それから、もしや、日月なんて申しやしませんでしたか」
 私はいさゝか茫然たるものだった。
「えゝ、えゝ、云いましたね。男が太陽、女がお月様、一対の日月とね」
 私のショゲ方はひどかったのである。女が絵の天才、私が文学の天才、それで日月、こう思いこんでいた私の甘さは馬鹿のようなものである。
「日月というのは、なんのことですか?」
 主婦は又、クスリと、ガッカリした笑い方をした。
「日月様とでも申すんでしょうか。キミちゃんが思いこんでいる宗教なんですよ。男と女、それが日月。でもねえ、キミちゃん自身、男のくせに女装して、つまり、自分が一人で日月をかたどっているという思いこんだ気持もあるんです。そのほかに、
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