はモラルがない。一見、知性がない。モラルといふものは、この後に来なければならないのだから、それ自体にモラルがないのは当然で、背徳だの、悪徳だのといふ自意識もいらない。思考する肉体自体に、さういふものはないからだ。一見知性的でないといふことほど、この場合、知的な意味はない。知性の後のものだから。
 これからの文学が、思考する肉体自体の言葉の発見にかゝつてゐるといふこと、この真実の発見によつて始めて新たな、真実なモラルがありうることを私は確信するのであるが、この道は安易であつてはならぬ。織田君、安易であつてはならぬ。



底本:「坂口安吾全集 04」筑摩書房
   1998(平成10)年5月22日初版第1刷発行
底本の親本:「読売新聞 第二五〇九九号」
   1946(昭和21)年11月18日
初出:「読売新聞 第二五〇九九号」
   1946(昭和21)年11月18日
入力:tatsuki
校正:宮元淳一
2006年5月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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