子の誘惑の魔手にかかって関係を結んでおり、それを種におさえつけられているからであった。彼女に内幕をあばかれると、たいがいの名選手が家庭争議を起して、神経衰弱にならざるを得ない。
そのニラミをきかせて、フリーの女スカウトをやりだしたのだ。大鹿が顔をあからめているところをみても、彼も亦誘惑にまけた一人だと見当がつくのである。
「光子はこの隠れ家を知っているのだね」
「いえ、この家は葉子さん以外は誰も知りません。上野光子とは外でレンラクしているのです」
「そうかい。それは、よかった。光子がカクサクしても、三百万という大金はどこの球団もださないと思うが、かりに、その口があったにしても保留しておいてくれ。すぐ返事をもってくるから」
「ハ。では、お待ちしています。葉子さんに、心配するな、と伝えて下さい」
「よし、心得た」
煙山は直ちに東京へとって返す。三百万といえば、話にのる球団があろうとは思われないが、ただ問題は、専売新聞だ。あそこは打撃の一流どこをズラリと揃えたが、投手が足りない。大資本にモノを云わせて、必死に投手引きぬきに暗躍しているのだ。その新聞の記者が朝日撮影所の門前に葉子をはりこん
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