である。
「すると、あなた方は東京からズッと京都まで煙山氏を尾行してきたのですね」
「仰せの通りで」
警部は一人の刑事に命じて、両名からきいた旅館の名を教えて、煙山に出頭してもらうように命じた。刑事はすぐ、でかけた。
「すると、大阪へ降りて、桃山、国府両選手を訪ねて、あとはマッスグ京都へ、ね。全然大鹿に会う時間はないワケですね。九時半ごろまで」
「左様で。しかし、ですな。我等ことがウドンをくい、酒をのんどるヒマに、煙山は散歩にでてしもうたですわ。しかし、カバンは、持って出ませんということで」
「しかし、九時半に上野光子が大鹿を訪ねていますが、そのときは契約を交したあとらしく、安心しきっていたそうですな」
「アレマ」
「無名の怪人物からの電話で尾行を命令したのですな」
「イヤ、煙山の出発の時間を知らせて来たのですわ」
「そこが、ちょッと、面白いですな」
「変な電話がチョイ/\かかってくるもんですわ、新聞社ちゅうトコは。たいがいインチキ電話ですが、今度ばかりは、煙山の出発時刻から、ズバリそのもの。東京のフリダシから京都の上りまで、チャント双六《すごろく》ができてますわ。やっぱり、正月のせ
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