で三百八十万。百円札で百二十万。百円札が大変だ。トランク二つの荷物になってしまった。
ところが、その夜の六時ごろである。
専売新聞の社会部の電話がなる。居合した羅宇木介がとりあげると、ききなれない男の声で、
「専売新聞ですね。ハア、あのね。野球通の人にたのまれたのですが、明朝七時三十分発博多行急行にラッキーストライクの煙山スカウトがのるから、尾行してみたまえ、という話ですよ。サヨナラ」
ガチャリときれた。
暁葉子にかかりきって大鹿とのロマンス、大鹿の居所などを追っかけていた木介は、ギョッとして、金口《きんくち》副部長をふりかえり、
「変な電話ですぜ。これこれです」
「ふウン。部長に知らせろ」
部長の自宅へ電話で指令を乞うと、
「実はな。大鹿のことでは、上野光子が引ッこぬきの話をもちこんでるんだ。上野光子は今夜の夜行で、京都へ行く筈だが、この引ッこぬきは金額の上で折合わなかったから、失敗するかも知れん。煙山がでかけるとすれば、これも大鹿ひきぬきだ。こッちが引ッこぬきに失敗したら、暁葉子のロマンスを素ッぱぬいてやれ。煙山をつけでみろ。そして、大鹿の愛の巣を突きとめておけ。煙山をつ
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