投手殺人事件
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)細巻《ほそまき》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)名投手|大鹿《おおしか》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#嵐山のアトリエの地図(fig43190_01.png)入る]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)チョイ/\
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   その一 速球投手と女優の身売り

 新しい年も九日になるのに、うちつづく正月酒で頭が痛い。細巻《ほそまき》宣伝部長が後頭部をさすりながら朝日撮影所の門を通ろうとすると、なれなれしく近づいた男が、
「ヤア、細巻さん。お待ちしていました。とうとう現れましたぜ。暁葉子《あかつきようこ》が。インタビューとろうとしたら拒絶されましたよ。あとで、会わして下さい。恩にきますよ」
 こう云って頭をかいてニヤニヤしたのは、専売新聞社会部記者の羅宇木介《らおもくすけ》であった。
「ほんとか。暁葉子が来てるって?」
「なんで、嘘つかんならんですか」
「なんだって、君は又、暁葉子を追っかけ廻すんだ。くどす
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