探偵小説を截る
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)角《つの》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)商売|仇《がた》き

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ピタリ/\
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 私は探偵小説をよむと、みんな同じ書き方をしているので、まずウンザリする。洋の東西を問わず、本格推理小説となると、みんな形式が同一である。
 先ず第一に名探偵が現れる。この名探偵がいかにも思い入れよろしく、超人的にピタリ/\とおやりになる。すると、対照的にトンマな警部とか、探偵とかゞ現れて、この御両人の角《つの》突き合いが小説の半分ぐらい占めているというアンバイである。
 私は探偵小説の歴史などには疎いが、私のよんだ範囲では、だいたい、この形式はガボリオーで完成しているようである。その探偵はタパン先生の弟子ルコックでありトンマ探偵は、時になんとか警部であり、時に巴里《パリ》名題の探偵というグアイである。
 ルコック探偵には、商売|仇《がた》きのボンクラ探偵の登場が絶対に必要なものがあり、それによってルコックの修業時代が表現
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