つ必要がある。帝銀事件などは、どうでもいい。三面記事、ビッグ・ニュース、それを面白がるだけで、たくさん。道義タイハイ、兇悪なる世相、などと、それは余計の邪魔物、あって益なく、百害あるだけのコケのお説法というものだ。
 どこかの都立の産院だか、病院だかで、捨子公認所をつくったそうだが、こういう工夫をいろいろとやる方に頭を使うべきである。捨子なさる方は当院の玄関へソッとおいて逃げてください、会いたくなったら、いつでもいらっしゃい、丈夫に育てておきます、などというのは、まことに気がきいていてオツな話だ。日本の風教の施策は、まずこんなふうな形のところから出発すべきだろうと私は思う。一人の悪産院を罰するよりも、捨子公認所をつくる、この方が健全な政治なのである。



底本:「坂口安吾全集 06」筑摩書房
   1998(平成10)年7月20日初版第1刷発行
底本の親本:「中央公論 第六三年第三号」
   1948(昭和23)年3月1日発行
初出:「中央公論 第六三年第三号」
   1948(昭和23)年3月1日発行
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2007年4月1日作成
青空文庫作成ファイ
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