ような小僧だなア。一見したところ、否、ジイーッとみつめても、ナメクジよりもダラシなくのびてやがるだけじゃないか。メメズ小僧とはよく云った。ドブから這い上ったような奴だ。アッ。いけねえ。懐中物は無事かな?」
 と、天元堂はハッと自分の胸を押えて、目玉を白黒させなければならない始末であった。
 あつらえ向きのガキを発見したから、天元堂はよろこんだ。さッそく立ち帰って、これを金サンに報告したから、金サンも有頂天になって、よろこんだ。
「ありがてえ。はやくそのガキを一目見たいね。つれて帰ってくればよかったのに」
「イエ、それがね。つれて帰れば私のウチへ泊めなくちゃアならないでしょう。私ゃあのガキと同居するのはマッピラですよ。カッパライを働くためにこの世に現れた虫のような薄気味わるい小僧なんですよ。旦那のウチへ泊めるなら、私ゃいつでもつれてきますがね」
「それはいけないよ」
「そうでしょう。ですから今度の日曜の一番で立って、つれてきます。その手筈をたててきましたから。ヒル前には戻れますから、対局は午後からということにして、もっとも、東京行きの終電事に間に合うように指し終らなくッちゃアね。私ゃあの
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