敬する。将棋ばかりでなく万事につけて機敏で手先が器用であるから、このガキが現れるとオチ/\油断ができないので、門前払いを食わされるようになってしまったのだそうだ。
「それはまた大へんなガキだね」
「しかし、滅法強いそうだぜ。賭け将棋の商売人をカモにしていたそうだからね」
「呆れたガキだ」
「ここできくと、わかるそうだ」
その所番地を教えてくれた。天元堂がそこへ行ってみると、そこはバタ屋集団で、団長さんは頭をかきながら、
「あのガキですかい。たしかに本籍はここだがね。どこをのたくってるか、誰にも分りゃしないよ。ま、きいてあげるけどね。オーイ。メメズ小僧は、いねえだろうな? エ? いる? おかしいね。なんだって、いやがるんだろう。え? メメズ小僧ですか? あいつの名ですよ。どこにもぐってやがるか分らないから、みんながこう呼んでるんですよ。本当の名前なんぞ有るかどうか分りゃしないね。あそこが小僧のウチだから、のぞいてごらんなさい」
小僧のウチをのぞいてみると、貧相な汚い子供が、何かせッせと細工物をやってる。革の指輪に先の曲った針金をつけているのである。甚だ性質のよからぬ道具らしい。天元堂
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