訪ねて訊いてみると、
「ウチにも少年が三人手伝ってくれているが、これはさる高段の先生から預ったものだから、私の一存で貸してあげるワケにはいかない。それに年もちょッとくッている。十二三の子供といえば、ウム、そうだ。私はまだその子供と指したことがないから棋力の程は知らないが、向島《むこうじま》にバタ屋の倅で、滅法将棋が強くッて柄の悪いのが一人いるそうだ。柄が悪いというのは、子供のくせに賭け将棋で食ってるそうだね。そういう奴だから、先生に世話してやろうという親切な人も、ひきとって育ててやろうという先生もいないが、小さいガキのくせに、力は滅法強いらしいな。この会所にもそのガキにひねられて三十円五十円百円とまきあげられた人ならタクサン来ているから、きいてあげよう」
二三の人にきき合せてくれると、いろいろのことが分った。浅草の某所に賭け将棋を商売にしているような柄の悪いのが集っている賭場のような会所があって、そのガキはそこに入りびたっていたが、今ではそこも門前払いを食わされるようになってしまったというのである。というのは、だんだんカモがいなくなってモウケがなくなったから、懐中物なぞをチョイ/\失
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