業か。損をかけたな」
「お前、いくらつかった?」
「アッハ。おかしくも、なんともねえ」
金サンが店へ戻ってみると、天元堂が裏庭から自分の二階へマキを運んでいる最中であった。ネジリ鉢巻に尻をはしょッて忙しくやっている。
「ヤ、旦那。無事、すみましたぜ。角落ちで、見事に三番棒でさア」
「そうだってな」
「マキは運んでいいでしょうね」
「うるせえな。運んでるじゃないか」
「ですから、運んでいいでしょうね」
「早く運んじまえ……」
金サンは割れ鐘のような声で怒鳴ると、家の中へもぐりこんでしまった。
底本:「坂口安吾全集 14」筑摩書房
1999(平成11)年6月20日初版第1刷発行
底本の親本:「キング 第二九巻第一四号」
1953(昭和28)年12月1日発行
初出:「キング 第二九巻第一四号」
1953(昭和28)年12月1日発行
入力:tatsuki
校正:noriko saito
2009年4月19日作成
青空文庫作成ファイル:
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