ている時に限って役に立つかも知れないが、平時の火事にはリレーするほど火事にそなえて人がかたまっている筈はない。早い話が小学校に深夜の火事があった場合、その近所には民家が一軒もないのだからバケツリレーはできない相談だ。それだけの人数が集る時には消防が到着している筈で、もしも消防が到着せずにバケツリレーで消す必要があるとすれば、そんな消防団こそ大訓練をやって魂のすげかえをしなければならないと云うのです。小学校には宿直という者がおって常時火の用心を心がけているから、今さらバケツリレーなどに参加の必要はないと云って、根作がいかに談じこんでも防火週間に協力してくれなかったのです。村民の大半もイヤイヤながらバケツリレーに駆りだされていたのですから、学校の先生の云い分が尤もだと云って、根作の評判の方が悪かったのです。根作はそれを根に持ったのです。彼は小学校の校長と、こんな風に言い合いました。(小学校から火事がでれば宿直の者がきっと消すか)(宿直は消防じゃないから火事を消すことはできないが、火事がでないように厳重に見まわりを行っているから、学校から火事がでる心配はない)私はそのとき一しょにそこにいまし
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