曾我の暴れん坊
坂口安吾

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)大人《おとな》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)連れ子|箱王《はこおう》
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     出家の代り元服して勘当のこと

 ある朝、曾我の太郎が庭へでてみると、大切にしている桜の若木がスッポリ切られている。
「何者のイタズラかな」
 しかし切口を見ると、おどろいた。直径二寸五分ほどもある幹を一刀両断にしたもの、実に見事な切口。凡手の業ではない。しかし、かほど腕のたつ大人《おとな》がこんなイタズラはしそうもない。イタズラしそうな奴といえば女房の連れ子|箱王《はこおう》ぐらいのものだが、奴め剣術の稽古は無類に好きとはいえ、まだ十一の子供。
「コレ、コレ、箱王。まさかキサマではあるまいな、この桜を切ったのは」
「イイエ。ボクです。工藤|祐経《すけつね》に見えたので、うっかり切ってしまいました」
「ウーム。見事な腕前。驚き入った」
「怒らないのですか」
 ワシントンとちがって、親父の怒るのをサイソクしている。もし怒ったら親父を相手に一勝負、これぞ望むところという不敵な料簡が顔にアリア
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