のオタマジャクシだってオカへあがってジャンパーを着るとお前より立派に見えらア。間男なんて聞いた風なことを云うない。人間のフリをするない。さッさと正体現してドブの中へもぐってしまえ」
「キサマ、オレをミミズとまちがえてやがるな。ミミズが兵隊になって支那へ戦争にでかけられると思うか。ミミズに支那ソバが造れるはずはねえや。こうしてくれる」
「ぶったな。もうお前なんかの顔を二度と見るものか」
 そのまま家をとびだしてしまった。
 虎二郎も、こまった。腹は立つが子供を二人のこされて、おまけに五千円の金がはいらなくなると、その日から生活にこまる。甚だ残念だが手をついて、あやまって、戻ってもらわないわけにいかない。また新しくお竹の身にそなわりはじめた色香にもミレンは数々ありすぎる。
 虎二郎は二人の子供をつれて料理店を訪ね、会わないというお竹にまげて会ってもらって、
「先日は手荒なことをして、まことにすまない。二人も子がある仲で子供をおいてお前にでてゆかれてはオレも死んでしまうほかに仕様がない。どうか戻ってくれ」
「お前さんがそんな風だから私はイヤなんだ。子供を三人も四人もかかえながら働いて子供を育
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