内の解答がどうあろうとも、人生案内の中の彼の女房とお竹とは同じ人間ではない。
解答の先生はお竹が彼をミミズ扱いにしたり、他のオタマジャクシにジャンパーをきせた方が亭主よりも立派だと断定したり、亭主に義理立てするのは雑種の犬と青大将ぐらいでタクサンだと云ったりしたことを知ってるはずがない。
「いかにホンモノの話だって、まさかそこまでは書けねえや。第一、人生案内に凝ったあげくということはキマリがわるくて書けやしねえ。世の中はママならねえもんだなア。人生案内てえものがニセモノに限るように、人生も人間てえものもいいカゲンの方がいいのかも知れねえな。うっかりすると、オレの見てる今の世界はみんなニセモノで、オレだけがホンモノなのかも知れねえ。空怖しいこった。クワバラ、クワバラ。人生案内の先生なんぞはムジナかも知れねえぞ。まア仕方がねえ。運を天にまかせて、ニコヨンでノラクラ生きるとしようじゃないか」
と、やや悟るところがあったのである。
底本:「坂口安吾全集 15」筑摩書房
1999(平成11)年10月20日初版第1刷発行
底本の親本:「キング 第三〇巻第一一号」
1954(昭和29)年9月1日発行
初出:「キング 第三〇巻第一一号」
1954(昭和29)年9月1日発行
入力:tatsuki
校正:土井 亨
2006年7月11日作成
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