神童でなかつたラムボオの詩
――中原中也訳『学校時代の詩』に就て――
坂口安吾
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)従而《したがって》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)そろ/\
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私は中原が訳すまで、ラムボオに『学校時代の詩』といふもののあることを知らなかつた。仏蘭西の全集には載つてゐないものである。日本流に数へて十五歳から十七歳までの作品らしい。
私は今までラムボオは神童だつたに違ひないと考へてゐたが、この詩集を読んでみると私の考へがまちがつてゐたことに気付いた。大人びたところがまるでない。その上、神童らしい神童の鋭さもない。だから後年やや長じて、ひとたび懐疑の真底へぶつかるや、まつさかさまに地獄へ墜落していつた荒々しいのたうちが尚よく分つた気がした。実を言ふと、私は神童なぞは凡そ面白くもないのである。
此の詩集の時代のラムボオは平凡な少年詩人だつたと言つていい。これは悪い意味に言つてゐるのではなく、寧ろ後年の振幅を理解させるに充分なほど大きな平凡であつたとの意である。十五歳の詩は全く十五歳の感傷に終始
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