はタマ貰い小僧に返送せずに、聯盟の役員にモーニング、シルクハットなどかぶらせてグランドへ立たせておいて、そのドテッ腹へ投げ返すことにしたらよろしかろうと内々遺恨をむすんだ程であった。
僕の見た二週間の野球見物に、これと云ってエキサイトしたゲームはなかった。得点はクロスしても、試合の内容はエラー続出の有様だったり、本当に野球をたのしませてくれたというのは一つもなかった。目下の選手の技術では、これも仕方のないことだから、せめて、アトラクションをつけてはどうかと思った。女優さんやジャズバンドなどの必要はない。前哨戦に、見物人にプロ投手の投球を打たせる余興をやったそうだが、こういう余興はいかにも手頃なアトラクションではないか。そうでもして楽しませてくれなければ、目下の試合内容だけを以てしては、甲子園の中等野球の魅力に及ばないように思う。中等野球は情熱自体がたくまざるアトラクションであり、要するに試合そのものがアトラクション的魅力を具えているからである。
後楽園球場で、最も実質ある内容をそなえていたのは、チョコレートスマックであったようだ。
どうせロクなシロモノじゃなかろうと僕は目もくれた
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