生が教祖の神性を認めた、ということをチャンと書いているんですからね。歓迎しますぜ。川野先生も、いかがですか。この機会に、もう一度、彼女の手から放射される熱を実験してごらんなさい」
「しかし、今日は行事のある日だろう」
「教祖と管長は一時間足らず顔を見せればあとは用がないのです。忙しいのは他の幹部と信者だけで、こういう日の方が、かえって誰にも邪魔されずにゆっくり教祖や管長と会見することができるのですよ」
 安福軒は宿屋の客引きのように自信マンマンと説明した。そこで川野水太郎も同行することになったのである。

     神サマの実力

 むかしさる富豪の別荘だった大邸宅が阿二羅教の本部になっていた。
 母屋の方では階下も二階も信者でごったがえしていたが、裏の離れは特別の幹部以外は立入ることができず、真昼というのに無気味なほどヒッソリしていた。
 この入口までくると、もう安福軒すらも立ち入ることができない。他の幹部が代って二人を中へみちびいてくれる。
「じゃアお帰りに待ってますぜ」
 そう呟くと、安福軒はあとは素知らぬ顔、にわかに生マジメに合掌瞑目、奥なる教祖に礼拝をささげて引返した。
 ま
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