んですッてさ。怒っても凄い見幕を人に見せるような素直な父じゃアないんですよ。もっと陰険な父なんです。ところがその時はもの凄い見幕で怒ってね、庖丁をとりあげて投げすてたそうです。八十松クンはその見幕におどろきながらも、ですがこれは私名宛の荷物なんですからと答えると、誰の名宛でもその荷物は私の荷物だと父はキッパリ断定して人をよんで奥の部屋へ運ばせてしまったのだそうです」
「それは奇妙ですね」
「奇妙でしょう。もっと奇妙なことがあるんです。今朝八時ごろ八十松クンは車をよんでその荷物だけ駅へ持って行って送りだしたんです。眼がさめると食事もせずにいきなりですよ。例の実演場の方はまだそのままなんです。食事を食べ終えてからポツポツ取り片づけにかかってるんですよ。どうしてみんな出来上ってから一しょに運ばないのかと思ってね、なにかワケがありそうだからオジサンに報告に来たのです」
「それはすばらしい報告かも知れないね。とびきりのね。ウーム。そうか忘れていたね。なぜ後閑仙七氏がビルマの孫をひきとることを思いたったか。その謎だ。待てよ」
九太夫は思わず相好をくずしたが、
「糸子サン、ちょッと待って下さい。し
前へ
次へ
全53ページ中45ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
坂口 安吾 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング