につゞいて、お供が七八百、それに三間半の朱槍五百本、弓と鉄炮五百挺、いずれも、しかるべき立派なものだ。
ところが、バカ聟が、ひどすぎる。かねて噂の通り、人の肩につるさがって瓜を食いながら城下を歩いている時と、まったく同じ姿なのだ。
頭は例のフンドシカツギである。萌黄のヒモで髪をグルグルたばねてある。裃や袴どころの話じゃない。ユカタの着流しで、おまけに肌ぬぎだ。腰の大小はシメ縄でグルグルとまいてあり、肌ぬぎの腕にも縄をまきつけて、これが腕貫《うでぬき》のつもりらしい。腰のまわりに、火ウチ袋ヒョウタン七ツ八ツぶらさげ、ちょうど猿廻しである。乗馬の心得で、虎の皮と豹の皮を継ぎまぜて造った半袴をはいていた。
この一行が信長の休憩にあてられた寺へはいると、道三はバカの正体見とゞけて、何くわぬ顔、自分方の寺へもどった。
ところが、道三も一パイくわされてしまったのだ。道三ばかりじゃなかった。信長の家来がキモをつぶした。
休憩所へはいると、すぐさま屏風をひきまわして、信長は立派な髪にゆい直し、いつ染めておいたか秘書官の太田牛一もしらない長袴をはき、これ又誰も知らないうちに拵えた小刀をさし、美
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