する確実な計出を必要とする。最も専門を要する職業なのである。
しかし一般には、こういう専門家の特性は考慮されてはおらず、したがって、専門家というものが、どういうものか知られていない。しかし、自分がまことに一芸に専門家であるなら、あらゆる専門家に貴賤上下の別がないことが分るもので、内村博士が荒巻に与えた訓戒は当然すぎるものであるが、日本の常識としては、これは尚、異端に属するものであるかも知れない。
内村博士のような学壇の壇の深くまつりあげられた超俗の学者が、嬉々として好きな野球随筆に打ちこんでいるのもアプレゲールの新風俗として慶賀すべきところであろう。
これに好一対をなすのが、宇野六段の阪神入りで、往年の学生横綱浅岡信夫が参議院議員になるよりも、宇野六段がバットをふり廻してくれる方が、私にはほゝえましく思われる。その方が筋が通っているからだ。
いったい日本のプロ野球では妙なことを言っている。六大学や実業団からの新人をすぐプロの本選手に仕立てゝグランドに出すのはプロの見識にかゝわるから、入団六ヶ月はグランドへ出すな、などゝ云っている。バカなことを言うものだ。うまけりゃ出すのが当り前
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