れてはやりきれるものではない。
 恵まれた平和な時に於て、外交に貿易に工場経営に農地経営に医療施設に文化施設に、良き実際の仕事を行って真価を問い、大多数の中間人を納得させることこそ、本当にやらねばならぬことではないか。共産党が政権をとらなくともできるのだ。一介のヤミ屋のボスすらマーケットをたて、土木を起し、工場を経営し、慈善事業をやったりすることができるではないか。建設的な仕事の面で真価を争い、他の政党にまさる実力を示して世の信用を博すのが、ひいては政党そのものの本当の実力の示し方でもある。しかし、日本共産党はその本当の内容に欠けているのである。そして国民を最も不幸な状態にひき下げて、最低の善行を施す程度の最も無能な内容だけしか持たないのである。
 政治というものは共産主義の理論でもないし、陰謀でもない。本店から金を貰うことでもない。そういうことは当てにすべきことではないし、そんなことを予定に入れて政治をやられては堪ったものではない。
 日本の資源はこれこれというハッキリした限界が政治の基礎である。日本共産党の場合にしても、政治の本当の基礎は、共産主義ではなくて、日本の資源という限界な
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