かも知れない。オレは武力征服などという暴力はとらない。ただ「愛される兵隊」になって、真に民衆のカッサイを博し選ばれるのだ、と。この笑うべきバカバカしい論理を実際彼らは信奉しているとしか思われない。つまり彼らは平和失格者なのである。恵まれた平和時代に、良き品性と良き仕事によって真に民衆の友となり選ばれる実力は全くないが、戦争して人を殺したり物をこわしたりしながら、かねてのヤミ屋の手腕によって、東条や吉田よりもマシな公平な最低生活を配給してカッサイされる自信だけはある、と思っているようだ。
 つまり彼らの政治は「最低生活」の配給へひき下って、そこで競争する以外に手を知らず、品性や秩序も「最低生活」なみのもの、つまり自分のレベルまでひき下げないと統率ができない仕組みであるらしい。他により高く恵まれた生活のモデルや、より高い品性のモデルや、より高い秩序のモデルがあっては、都合がわるいのである。
 公平な最低生活を配給するぐらいカンタンなことはありやしない。それはすでに東条がやった。もしも日本共産党が、東条がやったよりも、もうちょッとマシな方法でやれる手際を見せて、共産党の真価を発揮しようという
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