れの出たとこ勝負をやったお方にすぎないのである。共産党はそうではない。過去現在への幾多の検討は常時なされていなければならない筈で、何事に処しても確乎たる設計が施されるだけの充分な素養が当然なければならない筈である。しかし彼らは空想的な理想家革命好きであることをバクロしたにすぎず、内容も品性もゼロであった。マーケットのアンチャンは右であり、共産党は左であり、その中間の大多数は何でも真に良きものならば喜んでそれを選びとる人たちであるが、右も左も、中間の大多数に選ばれるために真に良き仕事や品性を高めようと努力するところはミジンもなく、事あらば暴力によって大多数を征服し、有無を云わさず号令をかける絶対君主におさまる片リンを示し、威脅しているにすぎない。その隣人たる中共は呪うべき内戦の辛苦を克服しつつ、品性の高さによって、万人にかなう正義によって、自然に民衆に選ばれ推される本当の内容を生み育てつつあるが、日本共産党は恵まれた平和な建設時代に処して、品性を高め仕事を推進することもできず、ただ牙をむき、刀をといで、武力による征服だけを当にしているのである。全くアベコベではないか。
 日本共産党は云う
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