かも知れない。オレは武力征服などという暴力はとらない。ただ「愛される兵隊」になって、真に民衆のカッサイを博し選ばれるのだ、と。この笑うべきバカバカしい論理を実際彼らは信奉しているとしか思われない。つまり彼らは平和失格者なのである。恵まれた平和時代に、良き品性と良き仕事によって真に民衆の友となり選ばれる実力は全くないが、戦争して人を殺したり物をこわしたりしながら、かねてのヤミ屋の手腕によって、東条や吉田よりもマシな公平な最低生活を配給してカッサイされる自信だけはある、と思っているようだ。
つまり彼らの政治は「最低生活」の配給へひき下って、そこで競争する以外に手を知らず、品性や秩序も「最低生活」なみのもの、つまり自分のレベルまでひき下げないと統率ができない仕組みであるらしい。他により高く恵まれた生活のモデルや、より高い品性のモデルや、より高い秩序のモデルがあっては、都合がわるいのである。
公平な最低生活を配給するぐらいカンタンなことはありやしない。それはすでに東条がやった。もしも日本共産党が、東条がやったよりも、もうちょッとマシな方法でやれる手際を見せて、共産党の真価を発揮しようというなら、それ以上に無能な政治はないと知るべきである。
自給自足の不可能なこの資源貧困な国土で、しかし、共産党の天下になれば、よその共産党がタダで物資をくれるとでも思っているのか。そんな虫のよいサモシイ料簡ではまさかないと思うが、しかし日本共産党の品性の低さを見ると、実際それぐらいサモシイ料簡のように思われて仕方がないのである。
資源貧困、自給自足でロクな生活のできない日本は、工業を起し、貿易によって生活水準を高める以外に仕方がない。いつ、いかなる時でもそうにきまったものである。
日本共産党は率先して近隣の共産党国家と友好的な貿易を促進し、日本人を、又隣人をうるおして、その真に仕事の良さによって、日本人に愛され選ばれるように努力すべきであった。
中共は現に戦争しつつあるから、やむなく掠奪暴行強姦をしないというような最低の善行に於て国民党軍と真価を争っているのであろうが、現に戦争しているから、そうせざるを得ないだけのことである。戦争中に掠奪暴行しないというのは、人間の最も不幸な状態に於ける最低の善行にすぎない。わざわざ人間を最も不幸な状態において、最低の善行を押しつけて、真価を誇示さ
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