れるやうに俯伏し項垂れてゐる女の身体へ、意地悪く縋り付こうとするのであつた。
「…………」
 もはや全く言葉の無い私は、ただむやみ[#「むやみ」に傍点]に、うねうねと動き出して止まらうとしない二本の腕を持て扱ひに悩み乍ら、ヂリヂリと詰め寄るよりほかに仕方がなかつた。彼は初めて次第に恐怖を表はして、鈍い動作でふと立ち上り、私を擦り抜けるやうにして戸口の方へ廻つて行つて、蒼白い薄笑ひを次第に硬直させ乍ら、私の腕を払ひのけるためのやうに無意味に其の手を振り動かして、少しづつ後退《あとじさ》るのであつた。彼は熱心に、喚き立つやうな意気込みにして、そのくせ嗄れた潰れた声で、「あれは俺の女だからいいではないか。あの女はもう俺と関係があるのだから――」さういふ事を懸命に言ひ張り乍ら、どうしても振向く暇《いとま》の無いうちに、彼の部屋まで、――階段を下つて、追ひ詰められてしまふのである。「俺は憂鬱なニヒリストだ、俺は全てに絶望した人間なんだ、俺は虚無を抱くやうにして、女を辱しめることが、好きなのだ、俺の気持に、お前が立ち入ることはないではないか――」彼は何かと面倒臭い術語を並べて、この意味の心境を熱狂
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