魂は荒々しく戸を蹴倒して我家へ帰る時があつても、私も亦、母の鼻すら捩ぢあげはしないであらう。私はいつも空の奥、海のかなたに見えない母をよんでゐた。ふるさとの母をよんでゐた。
そして私は今も尚よびつゞけてゐる。そして私は今も尚、家を怖れる。いつの日、いづこの戸を蹴倒して私は死なねばならないかと考へる。一つの石が考へるのである。
底本:「坂口安吾全集 04」筑摩書房
1998(平成10)年5月22日初版第1刷発行
底本の親本:「光 LACLARTE[#「E」はアキュートアクセント付きE、1−9−32] 第二巻第一一号」
1946(昭和21)年11月1日発行
初出:「光 LACLARTE[#「E」はアキュートアクセント付きE、1−9−32] 第二巻第一一号」
1946(昭和21)年11月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:宮元淳一
2006年5月5日作成
青空文庫作成ファイル:
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