の特権ですな。したがってまた友だちが女をつれて私の前へ現れたときは、私は彼の下役であり、また鈍物であるが如く彼をもちあげてやるです。これを紳士の教養と称し義務と称する、男女もまた友人たるときは例外なくこの教養、義務の心掛がなきゃ、これ実に淑女紳士の外道だなア。奥さんなんざア、天性これ淑女中の大淑女なんだから、私がいわなくっとも、なんとかして下さるはずなんだと思うんだけどな」
ノブ子さんには大学生が口説いたり附文《つけぶみ》したり、マーケットの相当なアンちゃん連が二三人これも口説いたり附文したり、何々組のダンスパーティなどと称して踊りを知らないノブ子さんを無理につれて行くから、田代さんのヤキモキすること、テゴメにされちゃア、あの連中、やりかねねえから、などと帰ってくるまで落着かない。からだなんざアとか、処女なんて、とかいってるくせに、案外そうでもないらしいから、私がからかってあげる。それは、あなた、だって、なにも、下らなく傷物になることはないからさ、誰だってあなた、好きな人が泥棒強盗式みてえに強姦されたんじゃア、これは寝ざめが悪いや。かほど熱心に口説いているけど、ノブ子さんはウンといわ
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