ャワーを浴びてピンピンしてたよ」
「待て、待て。白状するなら、こっちの部屋で……」
 と、社会部の荒くれどもは犯人の如くに彼をとりかこんで、グイグイ別室へ押しこんでしまった。

          ★

 アケミは文作を駅まで送ってから、ぶらぶら散歩して、農家から生みたての卵を買い、そこで二十分ぐらい話しこんだ。散歩から戻ってきたのが一時ごろであった。
 書生の木曾は台所の前でマキ割りをしていた。アケミは家の中へはいる前にマキ割りの音をたどって木曾のところへやってきて、
「安川さんは?」
「さア?」
「まだお帰りにならないのかしら?」
「僕はズッとここでマキ割りしてたもんで、家の中のことは知らないのですが……」
 なるほど相当量のマキが割られて散らばっていた。
 アケミは屋内に入り、思いきって居間の扉をノックしてみた。屋内一面に死んだように音がないので、イヤな予感がしていたのだが、意外にも居間の中から久子の澄んだ返事がきこえた。
「はい。どうぞ」
「アラ。安川さん、お一人?」
「ええ」
「先生は?」
「どうなさったんでしょうか。今までお待ちしてたんですけど……」
「原稿書いてらッしゃる
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