人だから、てんで死後に執着はなかつたのだ。お花畑で風のまに/\吹きちらされる白骨に就て考へ、これは却々《なかなか》小綺麗で、この世から姿を消すにしてはサッパリしてゐる、と考へる。この人は遺言を書き、生きてゐる暫しの期間、思ひつきに満足を覚えるだけで充分だつた筈である。実際死に、それから先のことなどは問題ではない自信満々たる生涯であつた。
あなた方はまだ三十に充たない若さであつたが、やつぱり、自信満々たる一生だつた。あなた方は、散つて真珠の玉と砕けんと歌つてゐるが、お花畑の白骨と違つて、実際、真珠の玉と砕けることが目に見えてゐるあなた方であつた。老翁は、自らの白骨をお花畑でまきちらすわけに行かなかつたが、あなた方は、自分の手で、真珠の玉と砕けることが予定された道であつた。さうして、あなた方の骨肉は粉となり、真珠湾海底に散つた筈だ。あなた方は満足であらうと思ふ。然し、老翁は、実現されなかつた死後に就て、お花畑にまきちらされた白骨に就て、時に詩的な愛情を覚えた幸福な時間があつた筈だが、あなた方は、汗じみた作業服で毎日毎晩鋼鉄の艇内にがんばり通して、真珠湾海底を散る肉片などに就ては、あまり心
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