っちゃ、男はみんなアレだけなんだから、それで結構、坊主は坊主、オデン屋はオデン屋、坊主と一緒になりゃお経の稽古をはじめる、オレと一緒になりゃ、さっそくサシミ庖丁ぐらい握りしめやがったろう。可愛いゝもんじゃないか。
未亡人がお経を読み、昼下りに香をたき、畑をたがやし、時折は粋なドドイツを自作して唄うよりも、こっちの方がどれだけシミジミしているか分らない。
「へへ、あのアマが、木魚をたゝいて、おとむらいにお経を読みやがるか」
彼はオデコをたゝいて喜んだが、あのアマのお経の功徳のせいか、変に胸が澄むような気持であった。
底本:「坂口安吾全集 06」筑摩書房
1998(平成10)年7月20日初版第1刷発行
底本の親本:「オール読物 第三巻第一号」
1948(昭和23)年1月1日発行
初出:「オール読物 第三巻第一号」
1948(昭和23)年1月1日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、「霞ヶ浦」は小振りに、「一ヶ月」は大振りにつくっています。
入力:tatsuki
校正:小林繁雄
2007年2月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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