禁忌による現実の畸型化は禁忌の解放によつて一応は整型しうる筈である。世のあらゆるセシル・ボランヂュも法院長夫人も、学窓の頃からその師と共にかかる一書をひもとかれるがよい。それによつて堕落するためではなく、それによつて自らその魂の純潔を深くせしめるために。なぜなら、良俗が如何に眼を覆ふにしても、それが人間の姿なのだから。それ故、それが又、あなた自身の姿でもあるのだから。
 この人間を直視するところから、我々の良俗を培ふことが必要なだけだ。



底本:「坂口安吾全集 05」筑摩書房
   1998(平成10)年6月20日初版第1刷発行
底本の親本:「世界文学 第一四号」
   1947(昭和22)年10月10日発行
初出:「世界文学 第一四号」
   1947(昭和22)年10月10日発行
入力:tatsuki
校正:oterudon
2007年7月15日作成
青空文庫作成ファイル:
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